「異色のキャリア」を持つジェットスター・ジャパン社員。ディスパッチャー(運航管理者)への道~Landing STORY Vol.7~

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「異色のキャリア」を持つジェットスター・ジャパン社員。ディスパッチャー(運航管理者)への道~Landing STORY Vol.7~

みなさんこんにちは
ライターのSHIORIです。

航空業界への就職を“旅”と定義するマイターミナル。
業界で活躍している人がどう羽ばたき、どう航空業界の地に着いたのかを掘り下げるインタビュー企画「Landing STORY」

前回の「Peach Aviation 株式会社」の中川様の記事はいかがでしたでしょうか?
7回目となる今回はジェットスター・ジャパン株式会社で働く田上 亮介様からお話を伺いしました!
珍しいご経歴や、運航管理という仕事にかける思いまでたっぷり語っていただきました。

■インタビュー
ジェットスター・ジャパン株式会社

田上 亮介様
新卒でIT関連会社に入社。
その後、国内航空会社に入社し整備管理業務に従事。
その後エンジニアとして航空機の維持補修に関する技術職を経験後、
2016年にジェットスター・ジャパン株式会社に入社。
2022年9月に運航管理者実地試験に合格。現在運航管理支援業務に携わっている。

大学院で飛行力学を学んでから運航管理者までの道

大学院で飛行力学を学んでから運航管理者までの道
Q簡単な経歴を教えてください
大学院で飛行力学を学びました。その後新卒で、人工知能を用いたシステム開発をしている会社に入社しました。
将来的に、飛行機の安全性を確保するために人工知能を使ったシステムが使われ、そこに関われるのではないかと思ったことがきっかけです。
その後、技術職で飛行機に関わる仕事をしたいと考え、航空会社に転職し、整備管理業務を主に担当しました。
簡単に言うと、飛行機の部品を買ったり、飛行機の整備をするツールを揃えたりする業務で、自分がイメージしていた技術者としての仕事とはギャップがありましたが、様々な学びがあり良い経験となりました。
その後、技術職としてのキャリアを積むために、航空機の維持補修業務を行う会社で、整備関連のエンジニアとしての経験を積みました。
その中で、運航に関するエンジニアとして仕事がしたい思いが高まり、現在のジェットスター・ジャパンに入社しました。




Qジェットスター・ジャパンに入社してからは、どんなお仕事をされてきたのでしょうか
最初の約3年は、運航関連の規程を管理する部署に所属していました。
一例を挙げると、例えばフライト前の飛行機に不具合が見つかった際、その飛行機を飛ばしてよいかどうかを判断する必要があります。その規程を作成する仕事です。
規程のベースは航空機メーカーが作成したものになりますが、当社で運航する機材のメーカーであるエアバス社はヨーロッパの会社のため、ヨーロッパで承認された規程をそのまま日本で使うことはできません。
そのため、航空法や日本の航空局が出している通達などと整合性を図り、当社で使える規程にしています。
2019年に部署異動をして、OCC(オペレーションコントロールセンター)に配属となり、ダイヤ統制※1という業務からはじめ、今は運航支援者として運航管理支援業務にも携わっています。
これは運航管理者の補助者として、運航管理者の承認のもと、運航管理者の業務を支援する仕事です。
飛行計画の承認と変更は運航管理者の業務ですが、運航支援者としても運航管理者に飛行計画を提案し、承認されれば、飛行計画の作成に携わることができます。
当社では、運航管理支援に携わる人は、ゆくゆくは運航管理者になることを目指してその業務に就いています。
その業務に関わりながら、2022年9月に運航管理者の国家資格を取得しました。
※1ダイヤ統制:遅延した飛行機の次の出発時間の決定や、機材繰りの調整、欠航便の調整などを行う





Q運航管理者の試験は大変でしたか
この部署に入って3年近くになりますが、試験のことを考えない日はありませんでした。
2020年に運航支援者になり、翌年の7月に運航管理者の筆記試験を受験しました。
筆記試験を受験する前の準備も結構大変でしたし、筆記試験合格後は実地試験に向けての準備を始めました。
1年以上かけて積み上げて行くので、準備期間は長いですね。
勉強することも多く、私の場合は筆記試験に合格してから実地試験まで1年程度必要でした。
また、筆記試験に合格してからは期限が設けられ、2年以内に実地試験に合格しなければ、筆記試験の合格も無効となってしまいますし、
実地試験の準備も自分だけではなく、上司や多くの同僚の助けを受けながら進めていくので、プレッシャーはありました。


「安全に飛行機を飛ばす」という強い使命感、運航管理者という仕事にかける想い

「安全に飛行機を飛ばす」という強い使命感、運航管理者という仕事にかける想い
Qでは、いよいよ運航管理者としてデビューされるのでしょうか
運航管理者として業務に就くためには、国家試験に合格していることに加えて、社内での教育、OJT、審査があり、これにパスしなければなりません。
したがって、今は社内の審査に合格するための準備をしています。
楽しみではあるものの、それより大きな責任を負う仕事だと思っています。
万が一何か起きた時のことを考えると、プレッシャーもあります。




Q確かにこれまで以上にプレッシャーがあるお仕事になりますね。
それでも運航管理者の仕事をしたいと思われるモチベーションはどこにあるのでしょうか

航空法で定められている飛行計画の承認は運航管理者しかできないことです。
この飛行計画の裏側には、当社の便には多くのお客様が搭乗されていて、その飛行計画を自分が承認するので、多くの方のためになる仕事に関われることが理由ではないかと思います。
国際線の保安検査場前でお客様が別れを惜しんでいる場面などを見ると、この方々を安全に目的地までお連れする仕事をやり遂げる使命感、
そしてこの仕事に資格をもって携わることができるという誇りを感じるのだと思います。




Qなるほど、お話をお伺いしていると、「安全に飛行機をとばす」ということがキーワードだと感じますが、そこに興味を持たれたきっかけなどがあったのでしょうか
もしかすると元々持っていた使命感みたいなものかもしれないのですが、
中学生のときに、図書館で加藤寛一郎先生という航空力学で有名な先生の本を読み、面白いと思って、将来飛行機に関わる仕事をしたい、
と思ったことがつながっていると思います。
加藤先生の著作の中には、一般の方向けに書かれた航空機事故の事例集もありました。
それを読んでいたこともあり、飛行機事故によって悲しむ人を少しでもなくすことができることに関わりたいという思いが生まれたのかもしれないです。




Q今のお仕事で大変なことはどんなことですか
ある日、西日本の天気が悪く、パイロットから飛行ルートを変更したいというリクエストがありました。
パイロットのリクエストにも応えながら、自分の仕事もこなし、全てをミスなく行う緊張感がありました。
天気が悪い日は、元々の飛行計画とは違うルートや高度のほうが揺れないし、お客様への負担も軽くなるのではと、急遽元々の飛行計画とは違うルートや高度を選定することがあります。
また天気も時間が経つにつれて元々の予想とは違う変化をすることもあり、
運航管理者もお客様にとってよい条件で飛行するために飛行計画を変更するので、飛行計画の変更リクエストで立て込むことがあります。
それに対して1便1便ミスなく対応していくことは緊張感を伴いながらも、得意ではないかと思います。




Q運航管理支援の仕事をしていてよかったなと思う瞬間はどんなときでしょうか
やはりパイロットにありがとうと声をかけてもらえる時や、お客様が無事に到着された後の笑顔を見ている時によかったなと思います。
今後も飛行機の運航の仕事に関わっていきたいですし、突き詰めていきたいと思っています。
また、これから運航管理者の資格の取得を目指す後輩をサポートしていきたいと考えています。


「粘り強く続けたこと」が夢のキャリアへ、大切なのは仕事もプライベートも「妥協しない」こと

「粘り強く続けたこと」が夢のキャリアへ、大切なのは仕事もプライベートも「妥協しない」こと
Q仕事をする上で大事にしていることはどんなことでしょうか
「妥協をしないこと」でしょうか。
不安やわからないことがあれば、調べる、マニュアルを見てクリアにしていくことだと思っています。
私が入社したばかりのころ、調べものをしておいてと依頼をされ、インターネットで調べて怒られたことがありました。
新人時代の失敗談ですが、安全を維持するためには国やメーカーが発行した情報を確実に読み取ることが重要ということを学びました。




Qお休みの日はどんなことをされてますか
最近はずっと試験の勉強をしていましたので、最近は何をしていたかなと考えたのですが。
筋トレは以前から続けているのと、妻も同業者なので、社員優待制度を使って旅行に行っています。
直近は、大阪、宮崎、沖縄、などに行きましたね。
沖縄では実地試験の受験前だったので、勉強合宿をしました。
妻も一緒だったのですが、私はホテルで缶詰で勉強をしていまして笑 勉強漬けの毎日だったのですが、妻の支えもあってここまでこれたと思っているので、本当に感謝ですね。
あと、永年の目標の飛行機の操縦ライセンスを海外に取りに行きたいと思っています。




Q:航空業界への就職を目指している方にメッセージをお願いします
準備を怠らないことを大切にしてもらいたいと思います。
常に自分の成し遂げたいことを頭に置いて、それに対して必要なことを着実に進めていく。
これを粘り強く続けることが重要だと思います。
ぜひ準備を怠らず、自分の目標に向かって進んでいただければと思います。


おわりに

最後までお付き合いいただきありがとうございます!
特異な田上さんのご経験だからこそ、様々な角度から仕事を見ることができるのだと思いました。
飛行機を安全に飛ばしたいという強い思いを持ち、これから運航管理の仕事に挑戦される今後の田上さんのキャリアが楽しみですね。