救急救命士から空の世界へ。ドクターヘリパイロットが語る挑戦と苦悩~Landing STORY Vol.10~

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救急救命士から空の世界へ。ドクターヘリパイロットが語る挑戦と苦悩~Landing STORY Vol.10~

みなさんこんにちは
航空業界への就職を“旅”と定義するマイターミナル。
業界で活躍している人がどう羽ばたき、どう航空業界の地に着いたのかを掘り下げるインタビュー企画「Landing STORY」

前回の「東邦航空株式会社」の清水様の記事はいかがでしたでしょうか?
10回目となる今回は西日本空輸株式会社の運航部でヘリコプターパイロットとして働く櫻井 雅幸様からお話を伺いしました!
ヘリコプターパイロットの仕事内容や、どんなキャリアを歩んできたのか、やりがいや苦労など、「困難しかなかった(笑)」と、笑顔で貴重なご経験を語っていただきました。

■インタビュー
西日本空輸株式会社
櫻井雅幸様
高校卒業後、救急救命士の専門学校を経て神奈川県内の消防へ入職。
救急救命士として9年間従事した後に、パイロット養成学校である日本フライトセーフティ株式会社に入校。
自家用操縦士(回転翼航空機)・事業用操縦士(回転翼航空機)取得後、西日本空輸株式会社に入社し、
送電線巡視・レーザー測量・報道業務などを経て、機長発令後約4年で機長時数1000時間達成。
2024年9月からドクターヘリの訓練開始。

「これが救急救命士の最後の仕事だよ」知人の社会復帰と就職の決意

「これが救急救命士の最後の仕事だよ」知人の社会復帰と就職の決意
Q簡単な経歴を教えてください
長野県飯田市出身で神奈川にある救急救命士の専門学校を卒業し、神奈川県内の消防へ入りました。
9年間救命士として勤め、とあるきっかけがあってヘリコプターの世界へ踏み込みました。

Qどのようなきっかけだったのでしょうか
消防10年目でヘリコプターの操縦士にチャレンジできる場面が訪れて、やめるべきか続けるべきかで悩んでた時に、プライベートのテニスの大会中に知り合いが心肺停止になってしまいました。
その方は、学校の先生だったんですけどAEDを使用し教壇に立つまで社会復帰させることができました。
そのとき神様が「これが救急救命士の最後の仕事だよ」って言ってくれた気がして
「自分の救急救命士人生、もう知り合いを助けたら十分なんじゃないか」と思い、パイロットへのチャレンジを決意しました。

Qなぜ救急救命士からパイロットになろうと思ったのですか
元々飛行機に乗るわけでもなく、ただ空港に行くのが好きだったんですよね。
自衛隊とか米軍の航空祭とかエアショーとか、ちょっと前までだとエアレースを見るのもめちゃめちゃ楽しくて好きでした。
昔から漠然とまず空を飛びたいっていう気持ちが強くて、そんなときにヘリコプターのパイロットにチャレンジできる場面が訪れたのが1番の理由です。

Qパイロットになるにあたり、どんな苦労や困難がありましたか
いやもう困難でしかなかったです(笑)
先ほどお話しした知人の社会復帰を経験したのが30歳を迎える前後のタイミングで、キャリアチェンジを決意してパイロットの養成学校に入学しました。
思い立ってすぐに養成学校へ入校し、まず免許取得に向けアメリカに行ったので、まずは語学の壁に直面しましたね。
もちろん教官も外国人で全て英語でのやりとりなので、英語ってだけで苦労しました。
自家用操縦士を取得し、日本へ戻ってきてからの訓練では時間も限られていましたし
訓練費用が高額なので、好きなだけ訓練できる環境ではなく。
正直「何ていう世界に飛び込んでしまったんだ」って思いましたね(笑)
GoProをつけて自分のフライトを何回も見直したり、あらゆる工夫をしてとにかく必死に食らいつきました。

Q免許取得後の就職についてはいかがでしょうか
就職活動については運もあったと思ってます。
年齢や飛行時間、募集の数など色々な側面から、私のように自費で免許取得した人が民間の運航会社に就職する隙間ってなかなかないのが現実で。
免許取得したタイミングで運よく今の会社の募集が出ていたので、就職できました。
少しラッキーもあったと思っています。
入社後は社内訓練を約1年半くらい経験して、現場に出ることができました。

前職と違う形での社会貢献。ヘリコプターパイロットとして高みを目指す。

前職と違う形での社会貢献。ヘリコプターパイロットとして高みを目指す。
Q社内訓練後はどのようなお仕事をしていたのでしょうか
私が勤めている西日本空輸株式会社は九州電力のグループ会社でして、ヘリコプターの運航を通じて地域社会に貢献する事業を展開しています。
例えば送電線パトロールを始めとする電力ライフラインの確保や、生活情報に欠かせない報道取材ヘリ、西日本エリアの防災ヘリやドクターヘリの運航などをやっています。
私が実際に社内訓練を終えてからは、送電線巡視やレーザー測量、報道業務を担当しています。
簡単にお伝えするとすれば、鉄塔や電線が劣化したり断線していないかなどの検査や、空からレーザーを照射して地形のデータをとったり。
報道はニュースなどで事件や事故とか上空からの映像が流れたりすると思うんですが、その撮影に関わるパイロットをしています。
これらの担当をしていく中で機長時数1000時間を超えることができ、9月からはドクターヘリパイロットの研修が始まります。

Q業務に当たる上でやりがいや大切にしていることはありますか
やりがいは安全に離陸して安全運航して安全に着陸することですね。
航空機は運航管理や整備士、営業担当など、いろんな職種の人が携わって初めて飛ぶことができるわけであって、
航空機を運航するなかで操縦士に求められることって安全運航の最終判断とか最終責任者だと捉えています。
それを全うして安全に着陸できた時にはやりがいを強く感じます。
大切にしている事は「人への感謝」ですかね。
育ててくれた親、支えてくれる家族、前職の上司や同僚、現職の方々、たくさんの方の存在があって自分がいて、フライトができる。
当たり前かもしれませんが、この感謝の気持ちは大切にしています。
また自分から伝える感謝もそうですが、周りの方から受ける感謝も自分のモチベーションですね。
人に感謝し、人の役に立つ仕事をするってことが自分の仕事のスタイルなのかもしれません。

Q櫻井さんにとっての安全とはどのようなものですか
一言で表現するのは難しいですけど、一番の安全は法令遵守だったり企業の決まり事などのルールに乗っ取って、それに逸脱しないように業務を行うことだと思います。
その中でも悩むことってあると思うんですよ。
これどうしたらいいんだろうっていうときにいかに冷静に判断できるか、ノーといえるか、突き進まないで行けるか、わからなかったら確認するとか、そういうことが安全だと思います。
あとは日々の自己管理を行うことも安全に繋がると思います。

Q今後のキャリアの目標はありますか
まずはドクターヘリに関わるというスタートラインに立てたので、これから研修が始まります。
さらにドクターヘリのパイロットとして独り立ちをして、社内のみならず、病院側のスタッフからも信頼されるように安全運航ができたらなと考えています。
また、救急救命士とパイロットは全く別の仕事ですが、過去の経験を活かし「櫻井さんのフライトで良かった」と言ってもらえるような仕事ができたらと思います。

コミュニケーションと責任感がチームを強くし、安全を守り基盤となる

コミュニケーションと責任感がチームを強くし、安全を守り基盤となる
Qお休みの日は何をされて過ごしていますか
元々テニスをガッツリやってたんですよね。
他に登山とかシュノーケリングとかいろいろやっていましたね。
でも、パイロットになってからは怪我するのが怖いので、ほんともう家事して買い物して筋トレして、お酒を嗜んだりしてます。
もちろん職業柄、時間と量は間違えませんよ(笑)

Q櫻井さんが一緒に働きたい人はどのような人ですか
コミュニケーションを取れる人と責任感がある人です。
どうしても安全に直結する仕事ですからね。
それは航空業界に限らずどの部門、どの部署にいても変わらないことですよね。
物事をはっきり言ってくれる人とか物事をきちんと受け止めてくれる人とかわからなかったらちゃんと聞いてくれる人とかはコミュニケーションを取りやすいと感じます。

Qこれから航空業界で働かれる方に対してメッセージをお願いします
何回も言っているようにパイロットだけではヘリを飛ばすことはできないですし、いろんな業種の人が関わって空が飛べると思うんですよね。
そしてやっぱり航空業界の仕事って安全が人命に直結するじゃないですか。
だから目的が夢であれ憧れであれなんとなくでも、とにかく責任感をもってチーム一丸となってその職務を全うすることが大切なのかなと。
いろいろなチームを通過してひとつの航空機が飛べるっていうのが醍醐味であり、楽しいことや大切なことなのかなと思うので頑張ってください。

おわりに

最後までお付き合いいただきありがとうございます!
終始謙虚な姿勢で取材を受けてくださった櫻井さんは「民間会社への就職はタイミングが良かった」とおっしゃっていましたが、櫻井さんの努力があって掴めた切符だと感じました。
どんな困難にも努力で超えていく櫻井さんの今後のご活躍が楽しみです!

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